はじめに

まず、違和感から始めます。

年収は大きく下がっていない
でも、豊かになった実感はない

この2つは、同時に成立しています。

年収 ↑(または横ばい)
実感 ↓

多くの人はここでこう考えます。

物価が上がったからだ

——その説明で、十分でしょうか?

この記事では、公開データをもとに

「収入」と「豊かさ実感」がズレる構造

を分解します。


データ上は「収入は大きく下がっていない」

まず、平均年収の推移を見てみます。

日本の平均年収の長期推移を示した折れ線グラフ。大きく下落はしていないが、長期的には横ばいで推移している様子が分かる

出典:国税庁 民間給与実態統計調査

年による上下はあるものの、

長期的に見ると大きく崩れているわけではない

ことが分かります。

ここだけを見ると

生活はそこまで悪化していない

とも解釈できます。

しかし、この見方には重要な抜けがあります。


見落とされがちな「実質」という視点

ここは少しだけ“式”で整理できます。

実質的な豊かさ = 収入 ÷ 物価

つまり、収入が同じでも

分母(物価)が上がれば、実質は下がる

という関係になります。

この構造を押さえるだけでも、
「なぜ体感が変わるのか」は説明できますが、
実際の違和感はこれだけでは説明しきれません。

収入のデータは、通常

名目(そのままの金額)

で語られます。

しかし実際の生活に影響するのは

実質(購買力)

です。

例えば

年収が変わらない
でも物価が上がる

場合、

収入が変わらない中で、物価だけが上がると
実際に使えるお金は減る

ことになります。

日本の消費者物価指数(CPI)の長期推移を示したグラフ。時間とともに物価が上昇していることが分かる

出典:総務省 消費者物価指数 / 厚生労働省 実質賃金指数

この時点で多くの説明は終わります。

物価が上がったから、余裕がない

——でも、それだけではありません。

この説明だけでは、

収入が増えている人でも
余裕がないと感じる

という現象を説明できないからです。


それでも説明しきれない違和感

ここで一度納得しそうになります。

物価が上がっているから、豊かに感じない

しかし、これだけでは説明しきれない違和感があります。

実際には、

収入が増えている人でも
「余裕がない」と感じているケースがある

という現象が起きています。

つまり、

収入 × 物価

だけでは説明できない、

別の構造が存在しているはずです。


年収は横ばいだが、物価上昇・固定費増加・SNS比較の影響により自由に使えるお金が減り、豊かさ実感が低下する構造を示した図解

本当の問題は「支出の構造」にある

ここで焦点を変えます。

収入ではなく、支出の中身

です。

近年は

・家賃 ・通信費 ・保険 ・サブスクリプション

といった

固定費の比率が上がっています。

固定費は

自動的に出ていくお金

であり、

選択できない支出

でもあります。

結果として

収入が同じでも
自由に使えるお金は減る

——ここで初めて、

余裕がない

という実感に繋がります。


「比較」が実感をさらに下げる

さらにもう一段、見えにくい要因があります。

比較

です。

SNSやメディアによって

他人の「良い部分だけを切り取った生活」が可視化される

機会が増えました。

ここで起きているのは

現実の比較ではなく、編集された比較

です。

その結果

絶対的には変わっていなくても
相対的には足りないと感じる

という認知が生まれます。


まとめ

ここまでを一言で言うと、こうです。

問題は収入ではない
「豊かさを感じる仕組み」が変わっている

年収という数字は変わっていなくても、

・物価の上昇
・固定費の増加
・比較環境の変化

によって、

同じ収入でも感じ方が変わる

構造になっています。

つまり、

数字と実感は一致しない

のではなく、

一致しないような構造に変わっている

ということです。


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