[集計できる設計と、集計できない設計]

なぜ項目設計が効いてくるのか

データを貯める目的は、たいてい「あとで使うため」です。今月の商談件数を知りたい、担当者ごとの状況を比べたい、地域別の傾向を見たい。そういう場面で初めて、設計の良し悪しが表に出ます。

そして厄介なのは、設計の失敗はデータが貯まってから発覚することです。100件貯まったあとで「この項目、集計できない形だった」と気づいても、100件を手作業で直すことになります。

だからこそ、最初の設計に少しだけ時間をかける価値があります。

原則1 — 選べるものは、選ばせる

もっとも効果が大きいのがこれです。選択肢が決まっているものを自由入力にしない

自由入力にすると、同じ意味の値が違う表記で入ります。「商談中」「商談中です」「交渉中」が混在すると、集計したときに別々の項目として数えられてしまいます。ドロップダウンやラジオボタンにしておけば、この問題は最初から起きません。

ただし、選択肢を増やしすぎるのも逆効果です。選択肢が多すぎると現場が選ぶのを面倒がり、結局いちばん上か「その他」ばかりが選ばれるようになります。目安として10個を超えるようなら、分類のしかた自体を見直すか、項目を2つに分けることを検討してください(この「10個」は本記事での目安です。厳密な上限があるわけではありません)。

原則2 — 種類に合った部品を使う

見た目が同じでも、部品の種類が違うとできることが変わります。

[入れたいものに、合った部品を使う]

入れたいもの

使う部品

理由

契約日・訪問日

日付

「今月分だけ」のような期間での絞り込みができる

金額・数量

数値

合計・平均が出せる

電話番号・郵便番号

文字列(1行)

計算しない。先頭の0が消えるのを防ぐ

長い経緯・メモ

文字列(複数行)

改行して書ける

とくに間違えやすいのが日付です。日付を文字列で入れてしまうと、「2026/8/1」「2026-08-01」「8月1日」が混ざり、期間で絞り込むことができなくなります。日付は必ず日付フィールドを使ってください。

逆に、電話番号を数値にするのもよくある失敗です。数値にするとハイフンが入らず、先頭が 0 の番号は0が落ちます。見た目が数字でも、計算しないものは文字列が原則です。

原則3 — 1つの項目に、1つの情報だけ

「担当者(営業部)」のように、1つの項目に2つの情報を詰め込まないでください。

こうすると、部署ごとの集計ができなくなります。「営業部の案件だけ見たい」と思っても、文字列の中に部署名が埋まっているだけなので、絞り込めません。担当者名と部署を別の項目に分けておけば、どちらの軸でも集計できます。

住所も同じです。1行の住所欄しかないと都道府県別に集計できません。都道府県だけドロップダウンで別に持たせておくと、あとが楽になります。

原則4 — 分類したい軸を、最初に項目にする

これがいちばん見落とされがちな原則です。

「あとで地域別に見たい」と思っていても、住所しか持っていなければ集計できません。「業種別に比べたい」なら、業種のドロップダウンが最初から必要です。分類の軸は、データを貯め始める前に項目として用意しておく必要があります

とはいえ、思いつく軸をすべて項目にすると入力が重くなります。判断の目安はこうです。

- 経営会議や月次報告で使う軸 → 最初から項目にする

- 年に数回しか使わない軸 → 備考に書いておき、必要になったら項目を追加する

原則5 — 必須項目は、本当に必要なものだけに

必須項目を増やすと、入力漏れは確かに減ります。ただし増やしすぎると別の問題が起きます。

現場が「とりあえず何か入れないと保存できない」状態になり、適当な値やダミーの値が入るようになるのです。こうなると、入力漏れよりたちが悪い状態になります。空欄なら「未入力」とわかりますが、適当な値は正しいデータと見分けがつきません。

必須にするのは「これが無いとレコードとして意味をなさない」項目だけにしてください。顧客管理なら会社名、案件管理なら案件名と顧客名、といった具合です。

実際に集計してみる

ここまでの原則が効いているか、実際に確かめてみます。前回作った顧客管理アプリで、「顧客ランク」と「取引状況」の集計をグラフにしてみましょう。

kintoneではグラフの設定画面で、分類する項目と集計方法を選ぶだけでグラフができます。関数を組む必要はありません。設定していくそばから、右側に結果のプレビューが表示されます。

[グラフの設定画面。分類する項目に「顧客ランク」、集計方法に「レコード数」を選んだ状態]

このとき選んでいるのは「分類する項目:顧客ランク」と「集計方法:レコード数」の2つだけです。それだけで、A(重点顧客)3件・B(通常顧客)4件・C(見込み)2件という集計が出ています。

きれいに分類されているのは、顧客ランクをドロップダウンにしておいたからです。もしこれを自由入力にしていたら、表記ゆれの数だけ棒が並び、集計として使いものになりませんでした。

原則1の効果が、そのままこのグラフに出ているということです。

よくある設計の失敗

最後に、実際によく見かける失敗をまとめます。

よくある形

直したい形

何が変わるか

ステータスを文字列で自由入力

ドロップダウン/ラジオボタン

表記ゆれが消え、集計できる

日付を文字列で入力

日付フィールド

期間で絞り込める

金額を文字列で入力

数値フィールド

合計・平均が出せる

「担当者(部署)」を1項目に

担当者と部署を別項目に

部署別に集計できる

住所1行だけ

都道府県を別項目に

地域別に集計できる

必須項目だらけ

必須は最小限に

ダミー入力が減り、データが汚れない

まとめ

  • - 項目設計は「入力しやすいか」ではなく「あとで集計できるか」で決める
  • - 選択肢が決まっているものは、必ずドロップダウンかラジオボタンにする
  • - 日付は日付、金額は数値、電話番号は文字列。種類に合った部品を使う
  • - 1つの項目に2つの情報を詰め込まない。分ければ両方の軸で集計できる
  • - 分類したい軸は、データを貯め始める前に項目として用意しておく
  • - 必須項目は増やしすぎない。適当な値が入るとかえってデータが汚れる

次回は、ここで整えたデータを実際に見える化する回です。一覧の絞り込みとグラフ機能を使って、現場の状況をひと目でつかめる形にしていきます。

同じ100件のデータでも、設計次第で「すぐ集計できるデータ」にも「手作業で整え直さないと使えないデータ」にもなります。そしてその差は、入力する人の手間ではほとんど変わりません。ドロップダウンにするか文字列にするかを、最初に決めるかどうかだけの違いです。

貯め方が整っているデータは、kintone上の集計だけでなく、その先の分析にもそのまま使えます。表記が揃っていて、項目の意味が定義されているデータは、Power BIに取り込んで経営指標に落とし込むのも簡単です。逆に、表記がばらばらのまま貯まったデータは、分析に入る前の整形作業に多くの時間を取られます。

実際、データ分析の現場では、作業時間の大半が「分析」ではなく「データを整えること」に費やされます。その整形作業の大部分は、最初の設計次第で発生させずに済むものです。

つまり項目設計とは、入力画面を決める作業であると同時に、将来の分析コストを先に払っておく作業でもあります。

UDATAでは、kintoneの導入サポートを行っています。どの業務からアプリ化すべきかの選定、後の分析まで見据えた項目設計、現場への定着支援、そして蓄積したデータのPower BIによる可視化まで、一貫してご支援しています。

「この項目設計で問題ないか見てほしい」「すでに貯まったデータを整理したい」といったご相談も歓迎です。お気軽にこちらからお問い合わせください▶ UDATAへのお問い合わせ