分析には、政府統計ポータル「e-Stat」の統計ダッシュボードAPIから取得した、総務省統計局「家計調査」の年次データを使用しています。二人以上の世帯を対象とした1か月あたりの平均支出額で、消費支出の総額と、食料・住居・光熱水道・交通通信といった費目別の内訳、さらに勤労者世帯の可処分所得や実質の前年比などが含まれます。2000年から2025年までの26年分を集計しました。当該統計をUDATA株式会社が加工して作成しています。

[家計・消費支出分析ダッシュボードの全体像]

全体像 ― 金額は横ばい、でも中身は変わった

まず1か月あたりの消費支出(総額)の推移です。近年の動きを見ると、2016年ごろを底に、物価高が進んだこの数年で上昇しています。

[消費支出の推移]

もっとも、少し長い目で見ると印象は変わります。2000年の消費支出は月平均31.7万円、2025年は31.4万円で、26年前とくらべると金額(名目)ではほとんど変わっていません。 一見すると「家計は安定している」ように見えます。しかしこれは名目の金額であって、同じ31万円でも、物価が上がればその中身(買える量や割合)は変わります。実際、支出の内訳を見ると、この間に家計の姿は静かに変化しています。

エンゲル係数の上昇 ― 食費に食われる割合が増えた

その変化がもっともはっきり表れるのが、エンゲル係数(消費支出に占める食料費の割合)です。

[エンゲル係数の推移]

エンゲル係数は、2005年の22.9%を底に、そこからほぼ一貫して上昇し、2025年は28.6%に達しています。20年で約6ポイントの上昇です。エンゲル係数は一般に「高いほど生活にゆとりがない」とされる指標で、その上昇は、食料品の値上がりが家計を圧迫していることを示しています。消費支出の総額が横ばいでも、その3割近くが食費に回るようになった——これが「金額は同じでも中身が変わった」の正体です。

何に、いくら使っているか

2025年の費目別の内訳を見ると、家計のお金の行き先がわかります。

[費目別の支出]

費目

月平均

構成比

食料

8.98万円

28.6%

その他の消費支出

5.44万円

17.3%

交通・通信

4.56万円

14.5%

教養娯楽

3.08万円

9.8%

光熱・水道

2.45万円

7.8%

住居

1.87万円

5.9%

保健医療

1.58万円

5.0%

家具・家事用品

1.29万円

4.1%

教育

1.19万円

3.8%

被服及び履物

0.97万円

3.1%

最大は食料の28.6%、次いで交際費などを含む「その他」、そして交通・通信の14.5%です。スマートフォンの通信費などを含む交通・通信が教養娯楽を上回っているのは、近年の家計の特徴です。逆に、被服や教育の割合は小さく、家計は「削れるところは削り、食費と通信費は削りにくい」という構造が見えます。

実質では、減っている年が多い

名目の金額が横ばいでも、物価の影響を除いた「実質」で見ると、印象は変わります。

[消費支出(実質)の前年比]

消費支出の実質前年比を近年で見ると、コロナ禍の2020年は-5.3%と大きく落ち込み、その後も物価高が進んだ2023年は-2.6%、2024年は-1.1%とマイナスでした。名目の支出額は増えていても、物価の上昇分を差し引くと、実際に買えている量はむしろ減っている年が多い、ということです。「支出は増えたのに、暮らしが楽にならない」という実感は、この実質の動きに裏づけられています。

収入と支出のバランス

最後に、勤労者世帯の可処分所得(手取り)と消費支出の関係です。

[可処分所得と消費支出]

2025年の勤労者世帯は、可処分所得が月53.2万円、消費支出が34.6万円。手取りに対してどれだけ使ったかを示す平均消費性向は65.0%で、残りの約35%は貯蓄などに回っている計算です。可処分所得は消費支出を上回り続けており、平均的にはなお黒字を保っています。ただし、食費や通信費など削りにくい支出の割合が上がるなかで、この余裕がどこまで続くかは、今後の物価と収入の動き次第だといえます。


まとめ

- 消費支出(月平均)は2000年31.7万円→2025年31.4万円で、名目ではほぼ横ばい

- エンゲル係数は2005年22.9%を底に上昇し、2025年は28.6%。物価高で食費の割合が増えた

- 2025年の費目別は食料28.6%が最大、交通・通信14.5%が教養娯楽を上回る

- 消費支出の実質前年比は、物価高の2023年-2.6%・2024年-1.1%とマイナス。買えている量は減っている年が多い

- 勤労者世帯の平均消費性向は65.0%で、平均的にはなお黒字。ただし削りにくい支出の割合は上昇中

- 「金額は横ばい」の裏で、家計の中身(食費の割合・実質の量)は着実に変わっている

家計の変化は、総額だけを見ていても気づけません。エンゲル係数や実質の前年比といった「割合」「実質」の指標を合わせて見ることで初めて、物価高が暮らしに与えた影響が見えてきます。

CSVの数字だけでは見えてこないもの

今回使ったのは、誰でもe-Statから取得できる公的統計です。しかし取得したままの形は、指標ごと・年ごとに数値が並んだ表の集まりです。ローカル保存やファイルサーバー中心のExcel運用で、消費支出と食料費を別々の表から取り出し、割り算をしてエンゲル係数を出し、それを26年分並べて……という作業を毎回手でやり直すのは、現実的ではありません。しかも指標を1つ増やすたびに、同じ手作業が発生します。

Power BIで可視化すると、こうした複数の指標が一度に、しかも常に最新の状態で見えるようになります。消費支出の推移とエンゲル係数の上昇を並べて眺めれば、「金額は横ばいなのに中身は変わった」という構造がひと目で分かります。「なんとなく食費が高い」という実感を、「エンゲル係数は20年で6ポイント上昇し28.6%」という具体的な数字に変換できるのが可視化の価値です。

さらにPower BIのスライサー(フィルター機能)を使えば、特定の費目だけを取り出したり、比較する期間を絞ったりと、知りたい切り口に応じて自由に掘り下げられます。公的統計を定点観測しながら、必要なときに必要な角度で見られる状態をつくれます。

このようにPower BIは、単なるグラフ作成ツールではなく、複数のデータを統合し、継続的に更新・活用できる分析基盤として機能します。今回のような公的統計に限らず、自社の売上・仕入・価格といったデータと組み合わせることで、「物価の動きと自社の販売価格の関係」「費目別支出の変化と自社商材の需要」といった、経営に直結する指標を継続的に追いかけることが可能になります。

UDATAでは、こうしたデータ分析・ダッシュボード構築の支援を行っています。「公的統計を自社の事業判断に活かしたい」「物価や消費の動きを定点で追いたい」「データはあるが可視化まで手が回っていない」といったお悩みがございましたら、ぜひこちらからお問い合わせください▶ UDATAへのお問い合わせ

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出典:総務省統計局「家計調査」(e-Stat 統計ダッシュボード)

   当該統計をUDATA株式会社が加工して作成