はじめに:
週次会議や上司への報告の場で、ダッシュボードを出した瞬間に
「なんか見にくいね」
と言われたことはないでしょうか。
ダッシュボードを作ったのに、なぜか「見にくい」と言われる。
数字は揃っているはずなのに、会議で判断が進まない。
この違和感の正体は、デザインの巧拙ではありません。
“誰が・何を・どの順で判断するか”が設計されていないことにあります。
本記事では、Power BIでありがちなNGを「見た目」ではなく、
意思決定の詰まり(Decision Gap)として分解し、Before/Afterの体験で改善のポイントを解説します。
この記事を読めば、ダッシュボードが“議論を進める道具”に変わります。
1. 色が多すぎる
NG(体験)
画面を開くと、赤・青・緑・オレンジ…すべてが強調されている。
例えば、CVR・売上・流入の3つすべてが赤で表示されており、どれも重要に見えてしまう。どこから見ればいいか分からない。📉問題の本質
優先順位が設計されていない。結果として「すべて重要=何も重要でない」状態になる。
会議で起きること
最初の一言が出ない。全員が“どこを見るべきか”の合意に時間を使う。
🔄改善(After)
最重要KPIだけを強調色に。他はグレーで抑制。
→ 一目で「今見るべき指標」が分かり、会話が即始まる。
2. 情報が多すぎる
NG(体験)
売上、CVR、CTR、流入、離脱率…指標は豊富だが、どれで判断すべきか分からない。📉問題の本質
「誰が何を判断するか」が未定義。情報はあるが意思決定のゴールがない。
会議で起きること
「で、結局どうする?」で止まる。判断責任が宙に浮く。
🔄改善(After)
この画面の目的を1つに限定(例:CVR低下の要因特定)。
主要KPI+原因分解の最小構成に絞る(例:CVR+流入数×CVR)。
→ 画面を見るだけで“次の一手”が合意できる。
3. スクロールが必要
NG(体験)
上に全体、下に詳細。スクロールしないと全貌が掴めない。📉問題の本質
意思決定が1画面で完結しない。認知が分断される。
会議で起きること
「さっきの数値どこだっけ?」と行き来が発生し、議論のテンポが落ちる。
🔄改善(After)
ファーストビューに「結論(KPIの状態)」と「主要因」を集約
(例:CVR・前週比・アラート状態)。
詳細はドリルダウンに分離。
→ 3秒で状況把握、必要時のみ深掘り。
4. グラフの種類がバラバラ
NG(体験)
同じ“推移”なのに片方は折れ線、もう片方は棒。
読み取り方を毎回切り替える必要がある📉問題の本質
読み取りルールの不統一。ユーザーに学習コストを強いる。
会議で起きること
グラフの解釈に時間を使い、本来の議論に入れない。
🔄改善(After)
同じ意味のデータは同じ表現に統一(推移=折れ線、構成比=積み上げ等)。
→ 見た瞬間に理解でき、比較が速くなる。5. ラベルや単位が分かりにくい
NG(体験)
「1,234」は何の数値?円?件数?率?解釈を一瞬迷う。📉問題の本質
解釈をユーザーに委ねている。一瞬の迷いが連鎖して認知負荷を上げる。
会議で起きること
小さな確認が積み重なり、テンポが崩れる。
🔄改善(After)
単位・期間・定義を明示(例:CVR(週次, %))。必要に応じて注釈を固定表示。
→ 迷いゼロで読み進められる。6. ストーリーがない(※具体数値例あり)
NG(体験)
結果と要因が分断され、数字が並んでいるだけ。📉問題の本質
因果の導線が設計されていない。分析ではなく羅列。
さらに、人は「抜け漏れなく見せたい」という網羅欲や安心感から、関連指標を横並びにしがちで、結果としてストーリーを壊してしまう。
会議で起きること
各自が別の仮説を持ち、議論が散らかる。
具体例
CVRが3.2% → 2.4%に低下しているにもかかわらず、
同じ画面に流入・クリック・デバイス別・チャネル別がバラバラに配置されている。
→「流入は増えてるよね」「でもCVR下がってるよね」と会話が分断され、
原因特定までたどり着かない。
🔄改善(After)
「CVR低下」を起点に、
→ チャネル別CVR
→ デバイス別CVR
→ LP到達後の離脱率
と“原因に向かって辿れる配置”にする。
→ 「モバイルのCVRだけ落ちている→LP表示速度が原因では?」と、
その場で仮説まで到達できる。7. 重要度の優先順位がない
NG(体験)
すべて同じサイズ・同じ位置。視線が彷徨う。📉問題の本質
視線誘導の不在。どこから見るかが設計されていない。
会議で起きること
見る順番が人によってバラバラになり、認識が揃わない。
🔄改善(After)
左上に最重要KPI、右に補助、下に詳細。
サイズ・余白・コントラストで視線の流れを作る。
→ 全員が同じ順序で理解し、会話が噛み合う。ケーススタディ:
「CVRが下がっているのに、誰も原因を特定できなかった会議」
ある週次レポート会議。
ダッシュボードには以下が並んでいた:
・売上推移(折れ線)
・CVR(カード表示)
・流入チャネル別(円グラフ)
・デバイス別(棒グラフ)
・離脱率(表)CVRは前週比で-0.8pt(3.2% → 2.4%)。
しかし会話はこうなる:
「流入は増えてるから悪くはない」
「でもCVR下がってるよね」
「季節性じゃない?」
——結局、原因は特定されず次週に持ち越し。
何が起きていたか
- CVRと原因指標が“空間的に分断”されていた
- 比較軸(前週比・デバイス差)が即座に見えない
- 「どこから見るか」が設計されていない

🔄改善後
・左上:CVR(前週比付き)
・右:デバイス別CVR(差分強調)
・下:モバイルLPの離脱率→ 3秒で「モバイルだけCVR低下」
→ 10秒で「LP離脱率上昇が原因」
→ その場で「モバイルLPの表示速度改善・ファーストビューUIの簡素化」を
次の施策として合意
会議は「改善施策の議論」から始まるようになった。
まとめ:
ダッシュボードの「見にくさ」は、見た目の問題ではなく意思決定の設計不在です。
まずは「1画面で1つの意思決定」に絞ることから見直してみてください。
- 何を最初に見るか(優先順位)
- 何を判断するか(目的)
- どう辿るか(導線)
この3点を定義するだけで、同じデータでも“判断できる画面”に変わります。
※本記事はPower BIを例にしていますが、考え方はすべてのBIツールに共通です。
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