はじめに

近年、日本企業でも「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。

多くの企業がDX推進を掲げ、データ活用やBIツール導入、データ基盤整備などの取り組みを進めています。

実際、各種調査でもDX投資の拡大が報告されています。

しかしここで一つ疑問があります。

日本企業のDXは、本当に実際の業務や意思決定を変えているのでしょうか。

本記事では、公開されている調査データをもとに、日本企業のDXとデータ活用の実態を整理してみます。


日本企業のDX投資は確実に増えている

まず、日本企業のDX投資の状況を見てみます。

IPA(情報処理推進機構)が公開している「DX白書」では、日本企業の多くがDXへの取り組みを進めていることが報告されています。

「DXに取り組んでいる企業は69.3%」

(出典:DX白書2023|IPA)

※全社DX・一部部門DX・部署単位DXを含む

このデータからも、日本企業の多くがDX推進を重要な経営テーマとして認識していることが分かります。

日米におけるDXの取組状況

DX白書2023 日本企業と米国企業のDX取り組み状況

出典:DX白書2023(IPA)

例えばDX白書では、多くの企業が

・DX推進を経営課題として認識している

・DX関連投資を拡大している

と回答しています。

また企業のDX施策としては

・業務のデジタル化

・データ基盤の整備

・BIツールの導入

などが多く挙げられています。

このようなデータを見る限り、日本企業のDX投資は確実に進んでいると言えます。


一方で「データ活用」はそれほど進んでいない

しかし、別の調査を見ると少し違った状況が見えてきます。

例えば総務省が実施している「通信利用動向調査(ICT利用動向調査)」では、企業のデータ活用状況について次のような結果が報告されています。

「データを経営判断に活用している企業は一部にとどまる」
(出典:総務省 ICT利用動向調査)

・データを業務改善に活用している企業

・データを意思決定に活用している企業

の割合は、DX投資の広がりに比べるとそれほど高くありません。

調査では、企業における

・IoTやAIなどのデータ活用システムの導入

・データ収集・分析の実施状況

などが継続的に調査されています。

しかし、こうしたデータ活用の取り組みは一部の企業に限られており、DX投資の広がりに比べると実際の活用はまだ限定的です。

IoTやAIなどのシステムやサービスの導入状況

日本企業におけるIoTやAIシステム導入状況

出典:総務省 通信利用動向調査

つまり

DXの取り組みは広がっているが、データが実際の意思決定に活用されている企業はまだ多くない

という状況が見えてきます。

ここで一つの疑問が生まれます。

なぜDX投資が進んでいるにもかかわらず、データ活用はそれほど進んでいないのでしょうか。


また、経済産業省のDXレポートでも、日本企業では既存システムの複雑化や部門ごとに分断されたIT環境により、全社横断のデータ活用が進みにくい構造が指摘されています。

DXレポートで指摘される「2025年の崖」と既存システムの課題

DXレポート2025年の崖と既存システム問題

出典:経済産業省 DXレポート

このように、複雑化した既存システムや組織構造が、データ活用を難しくしている可能性があります。

「DX投資」と「データ活用」の間にあるギャップ

ここまでの調査結果を整理すると、次のような構造が見えてきます。

DX投資:増えている

データ基盤・BIツール:導入が進んでいる

しかし

データを意思決定に活用できている企業:それほど多くない

つまり

DX投資と実際のデータ活用の間にはギャップがある

と言えます。

この構造は、多くの企業で見られる典型的なパターンです。

DX投資
↓
データ基盤 / BIツール導入
↓
ダッシュボード作成
↓
しかし意思決定ではあまり使われない

結果として

・会議ではExcel資料が使われる

・データは説明資料として使われるだけ

という状況になることも少なくありません。


問題はツールではなく「データ活用の設計」

このギャップは、単にツール導入の問題ではありません。

多くの企業では

・BIツール

・データ基盤

・ダッシュボード

などの導入は進んでいます。

しかし、それだけではデータ活用は進みません。

データを意思決定に活用するためには

・KPI定義

・データ更新プロセス

・会議や意思決定での利用方法

といった「運用設計」が必要になります。

例えば

KPI定義が曖昧
↓
部門ごとに数字が違う
↓
BIダッシュボードが信頼されない

という状況が起きることがあります。

また

データ更新プロセスが不明確
↓
ダッシュボードが更新されない
↓
Excel資料が使われ続ける

といったケースも見られます。

このように、データ活用が進まない理由はツールの問題ではなく、データ活用の設計の問題であることが多いのです。


公開データから見えてくるDXの課題

ここまでのデータを整理すると、日本企業のDXには一つの特徴的な構造が見えてきます。

DX投資やデータ基盤整備は進んでいる一方で、データを意思決定に組み込む運用設計まで整っている企業は多くないという点です。

つまり多くの企業では

・BIツールは導入されている

・ダッシュボードも作られている

しかし

・会議や意思決定のプロセスは変わっていない

という状態が起きています。

その結果

DX投資
↓
データ基盤 / BIツール導入
↓
ダッシュボード作成
↓
しかし意思決定では使われない

という構造が生まれます。

この段階では、DXは「ツール導入」には成功していても、意思決定の仕組みまでは変わっていないと言えます。

日本企業のDXの課題は、技術導入そのものよりも

データを意思決定に組み込む運用設計

にある可能性が高いと言えるでしょう。

まとめ

公開データを見る限り、日本企業のDX投資は確実に増えています。

しかし

DX投資がそのままデータ活用につながっているとは言えない

という状況も見えてきます。

DXを実際の経営や業務の変化につなげるためには

・KPI定義

・データ運用プロセス

・意思決定でのデータ活用

といった「データ活用の設計」が重要になります。

DXの本質はツール導入ではなく、

データを意思決定に活かす仕組みを作ることにあると言えるでしょう。


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