『データは21世紀の石油である』ビッグデータがあふれる現代、この言葉は多くのビジネスシーンで語られています。 データは企業の競争力を左右する資源であり、使い方次第で大きな価値を生み出します。 しかし石油と同じく、“掘り出しただけ”では意味がありません。どう活かすかが鍵となります。 その“活かし方”こそが、これからの企業に求められているのではないでしょうか。業務現場では長年、Excelが頼れるツールとして使われてきました。 関数やピボットテーブルなどを使えば多くの業務に対応できますが、データ量が増え、スピードと精度が求められる今、限界を感じる場面が増えています。そこで注目されているのがBIツールです。 BI(Business Intelligence)ツールとは、分散したデータを集約・可視化し、意思決定を支援する仕組みです。 人の判断に頼っていた領域でも、データに基づいた合理的な意思決定が可能になります。 中でもPower BIはMicrosoftが提供するツールで、Excelとの親和性が高く、導入しやすい点が特長です。Power BIとExcelの違い1. データの自動化と一元管理Excelでは複数ファイルの更新やコピー&ペーストなど、手作業による負担が大きくなりがちです。 Power BIは、Excelやクラウド、データベースなど多様なデータソースと接続し、最新データを自動で取り込むことが可能です。同じ階層にある複数のExcelファイルを1つに結合して分析に使用することもできます。また、毎日の更新作業や転記作業から解放されることで、属人的なミスや更新漏れを防ぎ、業務の効率化につながります。2. インタラクティブ性(相互作用)Power BIでは、気になるグラフの値をクリックしたり、フィルター操作によってレポートが動的に変化します。 区分別の売上を選べばその内訳が、時系列で絞れば変化の傾向がすぐに見えるなど、視点を自在に切り替えて迅速な判断を促します。 データをただ見るのではなく、ユーザー自身が直感的に操作しながら、必要な情報を自ら掘り下げていくことができます。 この「双方向性」こそが、Power BIの大きな強みです。3. 大量データの処理と“気づき”の発見Excelは数万行を超えると処理が重くなりがちですが、Power BIなら数百万行規模でも軽快に扱えますし、200種類以上のビジュアルを使って、情報をわかりやすく整理することができます。たとえば、売上と気温のデータを組み合わせて「暑い日にアイスが売れる」といった相関関係を見出すように、分析の第一歩を後押しします。 このように複数の視点を組み合わせることで、これまで見逃されていた傾向や問題の兆候に気づくことも可能になります。身近なBIの例:天気予報最もわかりやすいBIの例は「天気予報」です。 観測データを専門家やAIが分析し、「午後から晴れ」や「30度を超える見込み」といった、誰でも理解できる情報に整理して伝えてくれます。 私たちはそれを参考に服装を選んだり、予定を調整します。 こうした“判断に使える形に整えられた情報”こそ、BIの本質です。 Power BIも同様に、複雑なデータを誰もが理解できる形に整理し、次の行動を支援する役割を果たします。保険業界での導入事例生命保険会社では、Power BIの導入によってJGAAP決算用の成績集計が大幅に効率化されました。以前はExcelやAccessで集計していたものの、以下のような課題を抱えておりました。データが分散し、属人化している多様な切り口での集計が困難である他業務での再利用が難しいPower BIで契約データを統合・可視化することで、集計作業が効率化され、トレンド把握や他部門との共有も容易に。これまで数日かかっていた作業が大幅に短縮され、レポートの品質やスピードも改善。 意思決定のスピードと質が大きく向上しました。さらに、過去データの蓄積と再利用がしやすくなったことで、別の分析目的にも展開できるようになっています。渋谷区のデジタル活用事例渋谷区では、業務データの集計や共有にExcelを使用していましたが、Power BI導入後はリアルタイムでの可視化が可能に。 職員の業務効率化や、教育現場での学習支援、行政サービスの改善にもつながっています。 たとえば、教員が児童生徒一人ひとりの進捗をダッシュボードで可視化することで、個別対応の精度が高まり、教育の質が向上しています。 また、住民サービスに関する情報も共有され、市民との双方向のコミュニケーションも促進されています。まとめ「Power BIを導入すれば、Excelはもう不要なのか?」と聞かれることもありますが、実際には両者は補完し合う関係にあります。 Excelは入力や管理、Power BIは“見せる・伝える・判断する”ことに適したツールです。“データは21世紀の石油”──その価値を引き出すためには、ただ集めるのではなく、どう活かすかが重要です。 Power BIは、データの可能性を最大限に引き出すための力強いツールとなるでしょう。