近年、日常生活のデータを収集・分析することで、健康や生活習慣の実態を可視化する動きが加速しています。今回使用したデータは、CSV形式で羅列された「ライフスタイルと睡眠パターン」に関する記録データです。一見すると数値の集まりに過ぎませんが、Power BIによって可視化することで、「睡眠」「ストレス」「運動」「健康状態」といった要素の関係性を直感的に把握できるようになります。可視化は単なる見た目の美化ではなく、データが語る“行動と健康のストーリー”を発見するためのプロセスです。1. 全体傾向:健康意識の高さが見えるデータ構成全体平均を見ると、睡眠時間は8.1時間、睡眠の質は9.0(10点満点中)と非常に高い数値を示しました。さらに、1日の平均歩数は約7,000歩、ストレスレベルは3.0(10段階中)と中程度。このことから、データの対象者は一定の生活リズムを保ち、健康意識が高い層であることが伺えます。また、睡眠障害の有無を確認すると、全体の約3分の1が何らかの睡眠問題を経験しており、その多くが「軽度の障害」や「睡眠時無呼吸症候群」として報告されています。表面上は健康に見えても、睡眠の質や生活習慣の裏には小さなリスクが潜んでいることを示しています。2. 年齢別の睡眠パターンと変化傾向年齢別に見ると、20代後半から30代前半にかけて睡眠時間が短くなり、40代以降で再び上昇するパターンが確認されます。これは、仕事や家庭環境などライフステージの変化に伴うストレス・活動時間の影響が大きいと考えられます。特に30代前後では平均6〜7時間台に落ち込み、睡眠の質スコアも7前後に低下。一方で40代後半以降は7.5〜8時間台へと安定し、生活習慣の整いが健康状態にも反映されているようです。3. 職業別にみる生活と健康の差異職業別の分析では、エンジニアや営業職などの職種で平均睡眠時間が短く(約7.0時間)、一方で教育職・研究職では8時間前後と比較的長い傾向を示しました。マネージャー職は最も短く、平均6.5時間前後。これは高ストレス環境・不規則な勤務形態が要因とみられます。また、身体活動レベルでも職業ごとに違いがあり、外勤職は平均60〜70、内勤中心職は30前後と二極化。運動不足と高ストレスが重なる層では、睡眠障害発症率が他の2倍以上に達していました。4. ストレスと睡眠の関係性ストレスレベル別に見ると、中程度(3〜5)の層で最も睡眠時間と質が安定しており、極端に高いストレス(7〜8)になると、睡眠時間が6時間を下回る傾向が見られます。一方、ストレスが低すぎる(1〜2)層では、生活リズムが乱れ、逆に睡眠の質が低下するケースも存在。これは、「適度な緊張感」が規則的な生活と良質な睡眠を促す可能性を示唆しています。5. 日々の歩数と睡眠の質の相関散布図による分析では、1日の歩数が6,000〜8,000歩前後の層で最も睡眠時間が安定し、質も高い傾向が確認されました。3,000歩未満では運動不足が顕著で、睡眠時間・質ともにばらつきが大きく、9,000歩を超える高活動層では疲労の影響か、逆に睡眠の質がわずかに低下しています。つまり、健康を維持するためには、過不足ない“中程度の活動量”が理想であり、日常的な軽運動がメンタル面や睡眠改善に大きく寄与することをデータが裏付けています。6. データが教える「健康の可視化」の意義このような結果は、元々CSVファイルとして存在していた単なる行列データからは見えてこないものでした。Power BIによる可視化を行うことで、年齢・職業・ストレス・運動量・睡眠の相関関係を一目で捉えられ、個々の生活リズムやリスク傾向を深く理解することが可能になります。さらに、この分析結果は医療・教育・人事など、さまざまな現場での意思決定支援にも応用できます。例えば、企業では従業員のメンタルヘルス支援、学校では生活指導への応用、医療現場では睡眠障害リスクの早期発見など、幅広い領域での実装が期待されます。まとめ:データが描く「よりよい眠り」への道筋今回の分析から、健康的な生活を支えるポイントとして次の3つが明確になりました。適度な運動量(1日6,000〜8,000歩)中程度のストレスコントロール年齢・職業に応じた柔軟な睡眠時間の確保Power BI は、単なるデータ分析ツールではなく、「数値の中に潜む人間の行動や生活リズム」を見える化し、課題発見や改善策立案を支援するプラットフォームです。今後もこうしたデータ活用を通じて、健康的な生活の実現に向けた実践的なインサイトを提供していきます。一見、ただの数値に見えるライフスタイルデータも、可視化することで「心と体のコンディション」を映し出すストーリーになります。睡眠や運動、ストレスの小さな変化が健康にどのような影響を与えるのか──その背景を読み解くことで、よりよい暮らしのデザインが可能になります。UDATA株式会社では、こうした日常データの活用を通じて、企業・自治体・教育機関など多様な領域での実践的なソリューションを提供しています。ご興味のある方は、こちらからお問い合わせください。