当社では Power BI を活用し、医療・健康分野においてもデータの力で「リスク要因の見える化」を進めています。今回紹介するのは、糖尿病患者と非糖尿病者の生活・身体データをもとに、発症リスクを多角的に分析したダッシュボードです。CSVデータの数値をグラフ化するだけで、個々の生活習慣が血糖値・肥満・年齢とどのように関連しているかが明確になります。1. 概要と全体傾向ダッシュボード全体から、対象者768名のうち糖尿病群は268名(約35%)。平均BMIは35.14、平均血糖値は141.26mg/dLと、いずれも一般的な基準値(BMI 25未満、血糖値 110mg/dL未満)を大きく上回ります。この時点でデータ全体が「肥満傾向の高リスク群」を母集団としていることが分かります。円グラフからは、糖尿病群と非糖尿病群の構成が明確に可視化され、医療データの基本的な分布理解に役立ちます。2. 年齢と発症傾向:中年層から急増右上の折れ線グラフ(年齢別カウント)では、30〜45歳で糖尿病診断数が急増。ピークは35〜40歳台前半で、この層が発症リスクの「境界領域」であることを示しています。50歳以降は診断数が減少しますが、これは「人数減少(母集団が少ない)」または「既に治療中・除外された層が多い」ことが背景にあると考えられます。▶ 分析示唆発症リスクは年齢そのものよりも、「30代以降の生活習慣悪化+BMI上昇+家族歴の組み合わせ」が影響している可能性が高い。3. BMIと血糖値の関係:正の相関が明確中央の散布図では、BMIと血糖値が明確な正の相関を示しています。BMIが高くなるにつれ血糖値が上昇し、糖尿病診断群(紫)が右上方向に集中。これは、肥満が血糖コントロールに直結していることをデータ的に裏付けています。▶ 特徴的な点BMIが30を超えた辺りから血糖値150mg/dL超の割合が急増。それ以下でも糖尿病診断が見られるため、「肥満以外の要因(家族歴・生活習慣)」の関与も示唆。4. 家族歴(家系スコア)と糖尿病率:遺伝の影響が強い右上の「家系スコア別 糖尿病率」グラフでは、スコア上昇に伴い糖尿病率が上昇する明確な傾向があります。特にスコアが0.8〜1.0以上の層では、糖尿病率が他群の2倍以上に達します。家族に糖尿病既往がある人は、発症リスクが統計的に有意に高いことを反映しています。▶ 分析示唆遺伝的素因が強い個人ほど、若年期からの生活改善・食事管理・定期検診が必須。Power BIのスライサーを利用すれば、「遺伝リスク×生活習慣」の交差分析が可能。5. 血糖値とBMI・年齢の複合分析:多因子的リスクの可視化下部の棒グラフでは、血糖値の上昇に伴うBMI・年齢の分布が一望できます。血糖値120mg/dLを超えると、年齢とBMIの双方が右方向に偏り、「高齢×肥満」層が糖尿病診断の主要因になっていることを示します。▶ 特徴的なパターン血糖値が高くても若年層の場合、家族歴の寄与が大きい。高齢層ではBMIや運動不足などの生活要因が顕著。妊娠回数(女性のみ)も加味した場合、代謝ストレスとの関連を確認可能。6. 総合的考察:多層リスクの重なりこのダッシュボードから浮かび上がるのは、「単一の原因ではなく、多因子的なリスク構造」です。主なリスク層特徴改善策の方向性高BMI × 高家族歴遺伝+肥満の二重リスク群食事・運動療法+遺伝要因の早期スクリーニング高年齢 × 高血糖加齢性インスリン抵抗群定期検査+投薬コントロール若年 × 正常BMI × 高血糖潜在的体質・家族歴群定期HbA1c測定・ストレス管理▶ 結論として:「年齢・肥満・遺伝」それぞれの軸は単独ではなく、相互作用で発症を加速していることが可視化されています。7. Power BIの価値:医療データを“診断の補助線”にこのダッシュボードは単なるグラフ集ではなく、医療従事者が直感的にリスク因子を特定できる“診断支援ツール”として設計されています。データ列の羅列では分かりにくい因果関係(例:BMI×年齢×家族歴)を、散布図・積み上げ棒・KPIで同時に捉えることで、「見えない関連性を見せる」ことが可能になっています。Power BIにより、CSVの数値群が「リスク構造を語る可視化」に変わり、医療現場・企業の健康経営・保険分析など、あらゆる分野で応用可能です。医療・健康データには、リスクを“見える化”する力があります。UDATA株式会社では、Power BIを活用した医療・健康分野のデータ分析基盤構築や、リスク要因の可視化ダッシュボードの設計を支援しています。医療データ活用や分析環境構築に関するご相談は、こちらからお問い合わせください。